再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない～運命なんて信じないはずでした～
「結婚はしていないんだったよな？」
「ええ」

「離婚したのか？」
「いいえ」

デリケートな内容だけに、尊人さんも声を落として遠慮気味だ。

「それは、どうして？」

きっとなぜ結婚しなかったのかって聞たれているんだ。

「うぅーん、私に勇気がなかったから、かな」

全てを投げ出して尊人さんに飛び込んでいれば、違う人生が待っていたのかもしれない。
凛人にだって贅沢をさせてあげられたことだろう。
でも、私はそれが嫌だった。
もし凛人が尊人さんの子供だと知られてしまったら、私は凛人を奪われるかもしれない。
そんな恐怖をずっと感じている。

そもそも絶縁状態だった母の実家も大金持ちで、三朝財閥ほどではないが代々続く資産家。
そこの一人娘の母さんが家を出てしまい跡を継ぐ者がいなくなって、次に狙われたのは弟の徹だった
さすがに父さんが生きているうちは直接接触してくることは無かったけれど、父さんが亡くなって家計が苦しくなったのがわかった途端に徹の学費を援助すると申し出てきた。
しかしそこには条件があり、それは徹を養子に欲しいというものだった。
もちろん私も母も大反対したし、徹自身も拒んだから実現はしなかったけれど、今だに徹への連絡はあるらしい。

「あの子は私だけの子供です」
「１人で子供はできないだろ」

やっぱり、現実主義の尊人さんならそう言うだろうと思った。
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