再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
駅前から車で移動して、やってきた都心のホテル。
その1階にあるラウンジで私たちは向かい合った。

「無理やり君を連れ去ったみたいで申し訳ないな。彼、気を悪くしないか?」
「え?」

一瞬何を言われているのかわからなくて、その後気が付いた。
尊人さんは徹が私の彼だと思っているんだ。

「彼、お医者さんだっけ?」
「え、どうしてそれを・・・」
私はまだ何も言っていないのに。

ククク。
不思議なくらい場違いな笑い声をあげてから、尊人さんが薄茶色の髪をかきあげた。

「5年前、君と別れる直前から彼の存在は知っていたんだ。頼みもしないのに余計な話を耳に入れたり、見たくもない写真を送りつけてくる奴がいるものだからね」
「写真?」
「そう、君と今の彼が親しそうに寄り添って歩く写真。そこに相手は医学部の学生だって書いてあった」
「そんな・・・」

尊人さんはずっと、私に新しい彼ができてだから別れたいと言ったのだと思っていたんだ。
そんな風に思われていたのかと思うと悔しいし、ショックではある。
でも今のこの状況を考えれば、このまま誤解したままの方がいいのかもしれない。
咄嗟にそんな思いが頭を巡った。
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