再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「どうしてですか?」
朝から慎之介先生に呼び出された私は不満を隠すこともなく詰め寄った。

先週末に尊人さんに会い話をした。
約5年ぶりの再会はとても楽しい時間だった。
しかし、尊人さんからその場で連絡先を聞かれ私は断った。
それで終わったと思っていた。
でも、私は忘れていたんだ。
尊人さんは三朝財閥の御曹司で、やり手のビジネスマン。
駆け引きだって上手いし、目的のためには強引な手段だって使うこともある。
三朝尊人はそういう人だった。

「MISASAから業務のサポートとして1人出向させてほしいって依頼なんだよ」
「でも、だからってなぜ私が?」
「それは・・・」

慎之介先生は言いにくそうに言葉を濁したけれど、きっと私指名できた話なのだろうと思う。
そして、それは尊人さんの差し金だろう。

「断ってはもらえないですか?」
口調を弱め、お願いしますと頭を下げる。

こうして私に話が来たってことは、慎之介先生にも断れない状況なのだろう。
でも、だからと言ってこのやり方はあまりにも強引だ。

「断れないこともないが・・・」
「それじゃあ」
お願いします、断ってください。と言おうとした私を慎之介先生がじっと見つめていた。
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