再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「ああそうだ、沙月ちゃん今日の午後2時に来客があるんだ。下から直接上がってくるから、時間になったらお迎えをお願いします」
「はい」

下から直接と言うのは地下にあるVIP駐車場から専用エレベータで直接事務所にいらっしゃるってことで、かなりの有名人か特別なお客様ってことだ。
そもそも地下の駐車場自体も専用カードか事前連絡がないとは入れないようになっているから、私もお出迎えで数回行ったことがあるだけで滅多に使うこともない。

「どなたか特別なお客様ですか?」

あまり深いことを聞くつもりは無いけれど、お出迎えするからには最低限の情報は入れておきたい。
どこの誰が何しに来るのかもわからないでは、まともに挨拶だってできないから。

「お客さんではなくて、僕の友人。お金持ちの坊ちゃんで、多少顔も知られているから人目につかない方がいいかなと思ってね」
「ご友人ですか」

そりゃあね、3代続く弁護士一家の御曹司で自身も弁護士となればそういう交友関係があってもおかしくはないと思う。
でも、お金持ちの坊ちゃんかあ・・・
なぜか、この時の私には彼のことが思い浮かんでいた。
もちろん、5年も前に別れた彼がいきなり現れるとは思ってもいないけれど、こんな風にことあるごとに彼を思い出してしまう自分がほとほと嫌になる。
< 8 / 167 >

この作品をシェア

pagetop