再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「まあ、とっても素敵に仕上がりましたね」

途中簡単な食事を挟みながらの数時間。
深いブルーのドレスを着て、肩まであったセミロングの髪をアップにしてもらい、いつもはファンデーションとリップくらいしかしないお化粧もちゃんと施してもらったおかげで、自分ではないのではと思ってしまうくらいの変身を果たした。

「ヒールは5センチのものを用意しましたので、どうぞ」
スタッフの女性が私の前に置いた靴。

「あの・・・」
困ったな。
身長が170センチある私は普段からかかとのない靴しか履かないことにしている。
ただでさえ大きいのにこれ以背が高くなれば目立ってしょうがないし、高い身長は私のコンプレックスでもある。

「大丈夫ですよ。このヒールを履いてもお嬢さんの身長は175センチ。185センチの尊人さんとは10センチほどの差がありますから。男性と並んだ時に一番きれいに見える身長差って10センチなんです。だから安心して履いてください」

スタッフの中で一番年長の女性に大丈夫ですからと手をとられ、悩んだ末に私は靴を履くことにした。

「うわー、綺麗だね」

ちょうどそのタイミングで背後から尊人さんの声が聞こえ、驚いて振り返るとそこにはブラックスーツを着た尊人さんがいた。

「尊人さんもお似合いです」
お世辞ではなく、輝いて見える。

普段のスーツとは違う正装姿がよく似合っている尊人さん。
こうしてみると、やはりこの人は王子様だと思い知る。

「じゃあ、行こうか」
「はい」

その後、ネックレスとイヤリングまでつけてもらい、私は尊人さんと共にお店を後にした。
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