再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
まずはトイレで顔を洗った。
おかげでお化粧は落ちてしまったけれど、逆にすっきりした。
髪の毛はアップしにして固められているため今すぐにどうすることもできないし、ワインをかぶってしまったドレスの方もすっかりしみ込んでしまって手の打ちようがない。
ただ幸いなことに、ドレスの色が濃いブルーだったために一見しただけではわからない。
もちろんワインの匂いがプンプンしているから近くにいればすぐにわかるだろうけれど、タクシーに乗り込んで家に帰るくらいのことはできると思う。

「よし、携帯とお財布はバックに入っている。先ほど船が埠頭に到着したってアナウンスがあったはずだからこのまま下船してタクシーに乗り込もう。それから尊人さんに連絡すればいい」

こんな姿では尊人さんの隣に立つことなんてできないんだから、まずはここから出よう。
この時の私は、逃げることだけを考えていた。
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