再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「それじゃあ俺も着替えてくるから、適当に座っていて」

そう言って尊人が立ちあがったのは、お説教が終わってしばらくたってから。
見れば、尊人さんはまだパーティーから帰ったままの格好だった。

「スーツ、クリーニングに出した方がいいですね」
「え?」
「だって、ワインが染みてしまった私を担いだから、スーツが汚れたのかもしれないでしょ?」
「ああ、そうだな」

そう言えば、私のドレスも・・・

「あのドレスって買取ですよね」
どう見てもレンタルの品には見えなかった。

「ああ、あれは俺の方で処理するよ」
「そんな訳にはいきません。私が着てダメにしたんですから」
「違うだろ、ワインで汚して着られなくしたのは酒癖の悪い客だ」
「それはそうですが・・・」
うまく対処できなかった責任は私にもある。

「あの後相手の会社から侘びと、弁償したいとの申し出があったから断っておいた。そんなことで済んだと思われるのも癪だし、ここで恩を売ってビジネスの場で返してもらう方が得だしな。だから、沙月も今日のことは忘れてくれ。ドレスの代金についても既に処理済だから気にするな。いいね」
「・・・はい」

以前の尊人さんはもう少し穏やかな方法で物事を解決する人だった気がする。
5年も経てば人間変わるのか、アメリカ生活が変えたのか、理由はわからないけれどそうなってしまうだけの何かがきっとあったのだろう。
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