再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「あーぁ、さっぱりした」
10分ほどでシャワーから出てきた尊人さんは、短パンを履いただけの上半身裸姿。

「ちょっと、何か着てください」
つい、凛人に言うような口調になってしまった。

「いいじゃないか、今更」
「それでも・・・」

確かに、付き合っている頃は何度も体を重ねた。
でも今は状況が違う。

「付き合っていたころの沙月ははずがしがって、必ず『部屋を真っ暗にして』って言っていたから俺の裸なんて見たことないか」
「それは・・・」
こういう話を明るいリビングでされることが自体が恥ずかしいのに。
これって、絶対に尊人さんの意地悪だと思う。

「まああんまり虐めると嫌われそうだから、着るけれどね」

言いながらTシャツを着ようと背中を向けた尊人さんを見て、私は息をのんだ。

「あの、尊人さん、その傷って・・・」

右の肩口から背中にかけて残る傷跡。
かなり古いもののようで、今ではうっすらと跡が見える程度だけれど、かなり大きな傷ではある。

「あれ、沙月は知らなかったんだっけ?これは子供時に崖から落ちた時の傷跡なんだ」
「崖から落ちたんですか?」
「うん」

そんなこと知らなかった。
これだけ大きな傷が残るってことはかなりのケガだったはず。

「何があったんですか?」
無意識のうちに私は尋ねていた。
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