秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

秋人の声に体が強張る。

それでも私は動きを止めず、荷物を手に持って深々と頭を下げた。

「ごめん……仕事は別の日に改める。今日は、失礼します」

「何?」

顔を上げることもできないまま、彼を軽く押しのけてドアノブを握る。

「結愛、待て」

秋人には申し訳ないと思いながらも、聞こえてくる呼びかけに答えないまま社長室を出た。

すれ違った宮森さんと秋人の父が黙って私を凝視している気がして、いっそう激しく鼓動が鳴る。

気付かれた……? 私だってこと。

エレベーターを待つ気にもなれず、非常階段を駆け下り、北風が吹き荒れる銀座の街へと紛れ込む。

冷気に浮かんだ白い息は、儚く空へと消えていった。

このままじゃ、秋人の父に、宮森さんに、全部知られてしまう……。

すべて、築き上げてきたものが壊れる。

秋人には、もう会えないの?

秋人、私はどうしたらいい……?
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