秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
先ほど結愛の口からも雪平の名前が出たので、警戒心が強まる。
「彼女、もうすぐ誕生日だそうだよ。お前からも祝ってやってくれ」
「なぜ俺が? まだくだらないことを言ってるのか」
俺の機嫌が悪くなったのを察したのか、父は軽い調子で肩を叩いてきた。
「くだらなくはない、会社にとっても大切なことだ。梢さんはもういい年頃なんだし、大人の女性として、ディナーにでも連れていってやってくれ」
雪平梢は、葛城堂の大株主である、Happit生命社長の雪平勝義の孫娘だ。
そしてもともとは、亡くなった兄である薫の長年の婚約者だった。
薫が急死し、顔が立たないと思ったのか、薫が無理なら後釜の俺と雪平梢を結婚させようとしたのだ。
それに加え雪平が俺のことを気に入ってしまい、縁談を拒否したにも関わらず、こうしてしつこく関わってくる。
薫と俺は違う。
株主の顔色を伺って、人生を大きく左右する結婚を決めるなんて馬鹿げている。
それでも雪平梢と結婚しろとゆうものなら、俺はこの会社から出ていくとついに伝えると、父はそれなら諦めると言っていたはずだ。
「話はそれだけか? 仕事に戻る」
「秋人、お前もいい加減身を固めろ」