秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
父が俺の様子を伺っている気がしたが、構わず扉を閉めた。
広すぎる部屋にひとりきりになる。
本当は結愛の花をこの部屋に飾りたかった。
窓から差し込む柔らかい光の方へ、自然と吸い寄せられる。
重たい雲が太陽を覆い隠し、眼下に広がる銀座は鮮やかな街の色を消している。
――結愛に嫌われただろうか。
無理に触れるつもりなんてなかった。
でも、あのときの結愛に触れないなんて無理だった。
先ほどの彼女はめずらしく取り乱しており、まるで雪平に嫉妬しているような態度だった。
彼女からも、キスを求めてくれた。
あのまま父や宮森がやってこなかったら、俺は歯止めが効かなかっただろう……。
じゃあなぜ、結愛は今まで必死に俺と距離をとろうとしていたのだ?
どう考えても、俺への気持ちが残っているとしか思えない。
正直、再会してから彼女の態度でそう思うことも何度かあった。
初めに聞いた勝手にいなくなった理由も、どこかあやふやで腑に落ちていないのだ。
前向きな思考になるも、心は重い。
彼女が何かに怯えるようにして部屋を出た姿も脳裏に残っているからだ。
考えても埒が明かない。
直接彼女に会って話を聞こうと思い立ち、さっそくメッセージを送った。