秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

父の優しい説得により、あやめはしぶしぶおもちゃ箱に動物のフィギュアをしまっていく。

九月に誕生日を迎えたあやめは、現在二歳と少し。

自我が芽生え自己主張が激しくなる、世間でいう“いやいや期”というものに当たる。

食べることも、お友達と遊ぶことも好きなので食事や登園に困るということはないけれど、髪型や着る服にはこだわりがあるので、着脱にはかなりの時間がかかる。

そして大好きなお人形遊びに対しては他の遊びとの熱量が違い、高い頻度でイヤイヤを発揮する。

もちろん機嫌を直してくれず困り果てるときもあるけれど、それでもあやめが笑顔を見せてくれたり、楽しそうな笑い声をあげてくれると、どうでもよくなるのだ。


「まーま、おいちい! もっとじゃがいもほしい!」

夕飯を食べ進めていると、隣でベビーチェアに座っていたあやめが、口にじゃがいもをいっぱいつけて元気よく振り返った。

「わ、たくさん食べたねぇ。今お替り持ってくるから待ってて」

「んー!」

あやめは足をばたつかせ、満面の笑みで喜びを露にした。

可愛い、大好きだよあやめ。

笑った彼女の色白のほっぺは大福みたいにもっちりと盛り上がっている。

私を見上げる大きな漆黒の瞳はキラキラと輝き、長いまつ毛に縁取られてまるでお人形のようだと言われたりもする。

そして……今朝ツインテールに結んであげたまっすぐ伸びた長い髪も艶のある黒だ。

私は元々色素が薄く、毛は金色に近い茶色で少し癖がある。目の色も。

そう――あやめは、私ではなく“彼”にそっくりなのだ。

色白で整った顔に、オリエンタルな雰囲気をまとっているところも……。
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