秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

雪平が部屋を出ていく物音が、遠くで聞こえる。

結愛、申し訳ない。

冷静になり、彼女を俺の家の揉め事に巻き込んでしまったことへの、罪悪感が込み上げてきた。

正面に見えるオフィーリアの絵画が、空虚な俺の前に横たわっている。

行き場を無くし川に漂う彼女が、結愛の姿と重なった。

色白の手に握られた花々が、深い悲しみや、確かに手にしていた幸福を思い出すようにと、俺に訴えかけているようだ。

三年前――俺が家を空けている間に、結愛の身に何が起きたのだろう。

父はどうやって結愛に伝えたのだろう。

結愛は何故、何も言わず俺の前からいなくなったのだ。

どうして未だに、彼女はひとりで抱え込んでいるのだろうか。

すべて、すべて明らかにしよう。

そして、もう一度結愛と話をする。

まだ結愛が俺のことを想ってくれているのならば、人生をかけて幸せにするだけだ。

目の前に灯っていた蠟燭に息を吹きかけ、俺はその場に立ち上がった――……。
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