秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
街の喧騒を遠くで感じながら、自宅に戻って来た。
部屋の明かりが外にまで漏れていて、この様子だとまだあやめは起きていそうだ。
「ただいまー、みんなお待たせ!」
玄関の鍵を開けて扉を開けすぐ、足がすくむ。
「だ、誰……?」
玄関には父と母とあやめの見慣れた靴の外に、男性物の革靴が綺麗に並べられていた。
それに、この甘い香りは……まさか。
「まま!? ままだ~~!!」
廊下の突き当りにあるリビングの扉が開き、ひょこっと小さな顔がのぞく。
パジャマ姿のあやめが満面の笑顔で迎えてくれた。
「あやめ、ただいま! 遅くなってごめんね。それで、えーと……」
「葛城さんがお家に遊びに来てくれてるわよ」
続いて笑顔で顔を出した母が、予想通りの衝撃的な言葉を投げかけてくる。
緊張が頂点になりその場に立ち尽くしていると、遠くで物陰が動く気配を感じた。
「結愛、お邪魔してるよ」
母よりも数十センチ高い場所から、端正な顔が私のほうを向いた。
しかも今日は珍しくスーツ姿ではない、カジュアルな洋服に身を包んだ彼だ。
「どうして、秋人がここにいるの……!」