秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています


台所にやってきて肉じゃがを鍋からお皿に盛りつけた後、再びリビングに戻って来る。

母も父も、あやめも楽しそうに笑っている。

そんな彼らの姿をみて、何故か涙がこみ上げてきた。

たしかにあやめに父親がいないことに引け目を感じないわけではない。

けれど、両親の手を借りながら自分ができる範囲で、ようやく地に足をつけて幸せな生活を歩み始めているのだ。

だから、今日の出来事は誰にも話す必要はないし、これからも話すことはない。

あやめの父だけれど、愛している人だけれど、忘れることが一番だ。

私だけじゃない。

あれから三年も経っているのだし、“彼”の生活も大きく変化しているに違いない。

そう自分に言い聞かせながら、私は愛する我が子に笑いかけた――…。
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