秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
そう口にした途端、秋人の表情が苦し気に歪められ息を呑んだのが分かった。
視界は濁っている。
熱い涙が頬を次々と伝ってゆき、もうまともに彼の顔を見ることはできない。
「ごめんなさい……秋人。勝手に消えて……勝手にあやめを産んで……」
あのとき何があったのか、あのときどんな心境だったのか。
もっといろんなことを伝えたかったけれど、そう言葉にするので精一杯だった。
顔を覆って嗚咽を漏らしていると、ふいに腕を引かれる。
次の瞬間、大きな体が私の体を軋むほど抱きしめ、息が止まりそうになった。
「……っ、秋……」
「結愛……君は何も悪くない。だからこれ以上謝らないでくれ」
秋人は私の耳元で、消え入りそうな声で告げる。
秋人も泣いているようだった。
彼の痛みが抱きしめる強さから伝わってきて、さらに涙が溢れた。
しばらくふたりで体温を分かち合う。
これからどうなっていくのか、まったく見当がつかない。
さらに大きな困難が待ち受けているのかもしれない。
でも……不思議なことに私の心は晴れやかだった。
秋人にあやめが私たちの子だと伝えることができて、嬉しかった。
妊娠が分かってから、秋人にずっと伝えたかったのだ。
ようやく自分の気持ちを認められることができていると、彼はそっと私から体を離す。
「父親からも、宮森からも……すべて聞いた。雪平と結婚させるために、俺たちを意図的に引き離したということを」
「え……?」