秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

「私もだよ、秋人」

視界が定まらないところで想いを伝え、もう一度口づけを交わそうとしたそのとき。

背後から『くしゅんっ!』と小さなくしゃみの音が聞こえ、はっと互いに目を見開く。

「ご、ごめん、あやめ。風邪引いちゃう!」

「あーまいった……本当に申し訳ないことをした。今すぐ家に戻ろう」

「うん……!」

甘い雰囲気が一転、私たちは慌てて帰る支度を始める。

予備で持っていた赤ちゃん用の湯たんぽをあやめの腕に抱かせ、急いでベビーカーを押した。

「あやめちゃん、まだ鼻水は出てるか?」

秋人は急ぎ足で私の横を歩き、心配そうな表情で尋ねてくる。

「そこまでは出てなかったから大丈夫、安心して」

「よかった」

安心した表情の秋人は、どこか幼く見えて思わず頬が緩んでしまった。

これからはこうして三人でベビーカーを押しながら、お出かけしたりするのかな?

「秋人はあやめになんて呼んでほしい……? お父さん? パパ?」

「うーん……」
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