秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
「うん」
秋人の勧めで、隣り合って腰掛ける。
ほっと息を吐いたのもつかの間、ベンチに置いていた右手に長い指が力強く絡んだ。
重なっている彼の体温に、冷えた私の手が熱を帯びる。
いや……手だけではなく、足先まで全身。
「結愛、昔もベンチでのんびりしてたよな。俺はその時間が一番好きだった」
「えっ……そうなの」
驚いて思わず声をあげる。
秋人はもっと日本庭園など、日本的な芸術を見るのが好きだと思っていた。
こうやって私とただ座ってぼんやりする時間が好きだとは意外だけれど、とても嬉しい。
「私もそうだよ。場所はどこでもいい、秋人とふたりでこうしていると幸せなの」
つい思っていることを口に出すと、秋人はふっと乾いた笑い声をあげ、唇を頬に押し当ててきた。
振り返る間もなく、柔らかい唇に一度、二度と軽く頬を食まれる。
淡い刺激に体をよじると、握った手をわずかに強く引かれて、そのまま彼と唇同士を合わせた。
「ちょ、ちょっと秋人、こんなところでだめだよ……っ」
外でキスなんて、一人の子の親という意識があるからか、激しい羞恥心が襲ってくる。
「みんなは池に夢中だ。俺たちのことなんて見ていない」
秋人は唇に吐息がかかるほどの距離で微笑み、何度か口づけてくる。
「んっ。あき……んんっ!」
微かに高い声が零れ、私は急いで秋人から距離をとった。
「もうダメ、本当にストップ」