秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
秋人は少し恨めしそうな目で私を見つめた後、体を定位置に戻す。
「そうだな。いくらふたりきりとはいえ、俺はあやめの父だ。子に恥じないように行動しなくちゃな」
「……やりすぎはだめ」
そんなやりとりをしているうちに、前もこんな会話があったことを思い出した。
秋人はふたりきりの時はスキンシップが多い。
昔も人の目を盗んではキスをしたり、抱きしめられたりしたものだ。
「結愛を見ていると、食べたくなる」
ぽそっと彼のこぼした独り言を、私は聞き逃さなかった。
「私はおもちでもなんでもないよ」
「はは、この会話懐かしいな。大福もちみたいな頬が可愛いぞ、結愛」
秋人は少し硬い指先を、私の頬にむにゅっ……と鎮める。
そうだ、これも。
秋人はしょっちゅう、私のほっぺを触って癒されていた。
彼と思いを通じ合わせてから、いっしょに過ごす時間が格段に増えた。
今日までは、あやめと三人や、私の両親を含めた大人数で、食事をしたり、ある時には初詣に行ったり、買い物をしたりした。
言い忘れていたけれど、うちの両親は私から三年前の出来事、そしてあやめの出生事情を詳しく説明し、秋人のことを許してもらっている。
私は「ひとりでなんでも抱え込んで、まずは親に相談しなさい!」と叱責されたけれど……。
話は戻り、そんなこんなで長い時間を過ごすうちに、私たちは完全に昔のペースを取り戻していた。