秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

秋人は少し恨めしそうな目で私を見つめた後、体を定位置に戻す。

「そうだな。いくらふたりきりとはいえ、俺はあやめの父だ。子に恥じないように行動しなくちゃな」

「……やりすぎはだめ」

そんなやりとりをしているうちに、前もこんな会話があったことを思い出した。

秋人はふたりきりの時はスキンシップが多い。

昔も人の目を盗んではキスをしたり、抱きしめられたりしたものだ。

「結愛を見ていると、食べたくなる」

ぽそっと彼のこぼした独り言を、私は聞き逃さなかった。

「私はおもちでもなんでもないよ」

「はは、この会話懐かしいな。大福もちみたいな頬が可愛いぞ、結愛」

秋人は少し硬い指先を、私の頬にむにゅっ……と鎮める。

そうだ、これも。

秋人はしょっちゅう、私のほっぺを触って癒されていた。

彼と思いを通じ合わせてから、いっしょに過ごす時間が格段に増えた。

今日までは、あやめと三人や、私の両親を含めた大人数で、食事をしたり、ある時には初詣に行ったり、買い物をしたりした。

言い忘れていたけれど、うちの両親は私から三年前の出来事、そしてあやめの出生事情を詳しく説明し、秋人のことを許してもらっている。

私は「ひとりでなんでも抱え込んで、まずは親に相談しなさい!」と叱責されたけれど……。

話は戻り、そんなこんなで長い時間を過ごすうちに、私たちは完全に昔のペースを取り戻していた。
< 137 / 176 >

この作品をシェア

pagetop