秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

風に乗って運ばれてきた華やかな香りに、息を吞んだ。

「秋人……」

大きな薔薇の花束を持った秋人が、優しい笑みを浮かべ私を見ていた。

「結愛、愛してる」

秋人に手渡された花束を、胸元に手繰り寄せる。

今まで誕生日にもらったときのと比べものにならない本数だ。

妖艶でいて優しさを感じさせる薔薇の香りは、この状況をよりロマンチックにしてくれる。

「ありがとう。こんな大きな花束……」

「……ずっと渡したかった。俺が結愛を想う気持ちはこんなんじゃ足りないけれど、少しでも伝わってくれたら嬉しい」

「うん。伝わってる……十分」

秋人と視線を絡ませ微笑み合うと、彼はポケットから正方形の白い小箱を取り出す。

蓋が開くと、大きなダイヤがあしらわれたリングが、太陽の光に反射し煌めく。

それを見た途端、鼓動がどくんと大きな音を立てた。

「結愛、結婚してほしい。君を絶対に幸せにする」
< 139 / 176 >

この作品をシェア

pagetop