秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
山根さんがお花に水をあげながら、申し訳なさそうな表情で振り返る。
「こちらこそご心配をおかけしてすみません……! 少し寝不足だったのかも。もう全然体調は平気なので」
私が深々と頭を下げると、山根さんは背中をトントンと叩いて顔を上げるように促してくれる。
「よかった~……。いきなりお手伝い頼んじゃったし、しかも結構重労働だったしね。無理はしちゃダメだからね」
「はい……! ああやって会場のディスプレイが見れて勉強になりました、また是非お手伝いさせてほしいです」
「ふふ、そういうことならよかったわ。店長にも伝えておくわね」
山根さんは明るく私に笑いかけると、手に持っていたジョウロを作業台の上に置く。
「それでね、あとひとつ伝えておかなくちゃならないことがあって。これ……」
「え?」
山根さんはエプロンのポケットから一枚の名刺を取り出し、こちらに向かって差し出す。
訳が分からないまま受け取ると、彼女は困ったような表情で私の顔を覗き込んだ。
「この前、結愛ちゃんの代わりに店長に薔薇を届けたときに、男の人に話しかけられてさ」