秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
秋人の父に呼ばれ、体が強張る。
ゆっくりとこちらを振り返った秋人は、私を気遣うように目配せする。
「大丈夫か、結愛」
「……うん、平気。ちゃんとご挨拶させて?」
気を強く持ち、秋人に笑顔を向ける。
彼は遠慮がちに小さく頷くと、私と秋人の父が対面できるように横に移動してくれた。
「ご無沙汰しております。ちゃんとご挨拶ができておらず、申し訳ありません」
深く頭を下げ、秋人の父の出方を伺う。
以前社長室ですれ違ったときは、ろくに顔を見ずに逃げ出るような態度をとってしまった。
こうして対面するのは実に三年ぶりだ。
すると秋人の父は私に向かって手を差し出し、顔を上げるように告げた。
「しばらく、君の動きを見させてもらった。私たちのイベントを盛り上げてくれてありがとう」
「え……?」
体を正した私に、温かい眼差しが向けられる。
秋人の父は、そのまま私たちの後ろにあるフォトスペースに視線を投げた。
「時間がない中で、よくここまでのものを作ってくれた。機転を利かせ、花をプレゼントするという発想も素晴らしい。君はよくできた女性だ」
投げかけられた温かい言葉たちに、急に涙がこみ上げる。
どうして……? 私のこと、絶対によく思っていなかったはずなのに。
そう訊ねたかったけれど、口を開くと涙がこぼれてしまいそうだ。
すると秋人の父は、私と秋人を見渡して深く頭を下げた。
「若い君たちを苦しませて悪かった。私は、葛城堂を繁栄させることばかりに頭が向かって、何も、大切なことに目を向けられていなかった。私こそ、葛城堂にふさわしくなかった」