秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
握っていた茎を折ってしまいそうになり、とっさに手を離す。
私を真っ直ぐ捉えているのは三つ揃えのスーツを着た秋人だった。
長めの前髪は綺麗にかき上げてセットされており、その美麗な顔がはっきりと露になっている。
「瀬名……。やっぱりここの店員だったんだな」
「……っ」
彼は私の胸に付けられた名札を確認した後、再び視線をこちらに戻した。
身長も高く圧倒的な美形だから、周りにいたお客さんは皆、秋人に注目している。
あれだけ一緒にいた私も彼の迫力に飲まれそうだ。
頭では最悪な状況と理解できるのに、胸がときめき激しく心臓が動いてしまう。
「秋人、どうしてここに?」
名札を見られては、しらばっくれるのは難しいと諦めた私は、無理やり笑顔を作った。