秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
結愛はそう言って、俺の手からそっとしおりを奪う。
「家を出ていくときに、迷ったんだけど……花束から一本だけもらって、しおりにした。秋人の想いをずっと持っておきたかったから」
結愛の告白に、呆気にとられてしまう。
あのとき渡した花束はそのまま手を突かずに、部屋に置いてあると思っていたのだが、まさか一本だけ結愛が持っていたとは……。
その花をしおりにして、離れている間も、そして今もなお大切に持っていてくれる彼女に、俺への深い愛を感じる。
「ごめん、引かれると思って打ち明けるつもりはなかったんだけど……」
「引くわけないだろ。結愛、嬉しい」
照れる彼女の言葉を打ち消し、俺は真っ赤に色づく唇を奪った。
唇を離し、吐息が混ざる距離で視線を絡ませる。
「ずっと想ってくれてありがとう。これからも、よろしくな」
「……うん、こちらこそ」
彼女の真っ白な頬が、桃色に染まってゆく。
何度も愛を伝えても、伝え足りない。
何度唇を重ねても、彼女を求める気持ちは収まらない。
一生、俺の傍にいてほしい。結愛。
啄むように淡い口づけを交わす俺たちを、あたたかな春風が包み込む。
草原は揺れ、穏やかな陽光が家族を照らす。
まるで三人の今を、祝福するように――。
END.