秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
淡いピンクのガーベラをベースに、ボリュームのある真っ赤なトレーシーガーベラとコスモス散りばめられたダイナミックな花束に、俺はしばらく魅入ってしまった。
『こんな素敵な花束をありがとう。絶対に彼女は喜ぶよ』
『ありがとうございます。お客様にとって素敵な時間になるといいですね』
そう言って結愛は、飛び切りの笑顔で俺を送り出してくれた。
店を出てから、渡された花の美しさと思いがけない結愛の才能を目の当たりにし落ち着かなかった。
この日を境に、俺は結愛が働く花屋を度々訪れ、彼女に花束を作ってほしいと頼むようになった。
『葛城さんにとって素敵な時間になりますように』
彼女はその都度、花を渡す相手を想い、最高の形で俺を送り出してくれる。
『瀬名さんもお仕事頑張ってな』
結愛と顔を合わせるたびに、彼女の清らかで美しい笑顔に魅せられていった。
少しずつ世間話もするようになり、彼女が花屋の近くの学生寮に住んで美大に通っていることや、
昔から花が好きで、将来フラワーアーティストになりたくて、立体美術を学ぶために彫刻を専攻していることなど。
知れば知るほど彼女の花に対する追及心やまっすぐな気持ちに心惹かれ……。
何より彼女の温かい人柄に、仕事の忙しさで枯れていた心が潤っていった。
花束が後押ししたのか、俺は俺で交友関係は順調で仕事の幅も広がり、軌道に乗った。
こうして気がついたら、結愛の店に行くようになって一年が過ぎていたのだ。
『結愛、本当にいつもありがとう。何かお礼がしたいんだが、ほしいものはあるか?』