秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
『お、お礼だなんていりません! こちらこそ、お客様として葛城さんが来てくれて感謝しています』
この日は花束を頼みに来たわけではなく、家に飾る花を見に来たという口実で結愛に会いに来ていた。
もうこの頃には、彼女の存在が自分の中で特別なものに変わった自覚があった。
店の外で店員ではない彼女で、客ではない俺で会いたいと願い始めていたのだ。
『私も、葛城さんが頑張っているお話を聞くと、頑張ろうって思うから……。だから、それだけ十分なんです』
『そうか、でもなんでもいいんだぞ。用意できるものはいくらでも』
『そんなっ……!』
結愛は顔を赤くして戸惑っていた。
店主はにやにやと結愛の顔を見ながら肘で小突いたりしていたものだから、多少期待はしていた。
けれど、あまり無理強いしてもよくない。
ついに結愛が困ったように黙り込んでしまったので、諦めて帰ろうとしたその時……ふと大きな目が遠慮がちにこちらを見た。
『じゃ、じゃあ……花束が欲しい、です。私、貰ったことがなくて』