秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

思っても見ない事実に、俺は驚きを隠せなかった。

いつも花で人を幸せにしている彼女自身が、受け取ったことがないとは。

『分かった。結愛のことを想ってプレゼントする。楽しみにしていて』

彼女が贈る相手に、いつもそうであるように。

結愛は意味が分かったのか、照れたようにはにかんでいた。

俺は彼女にとって初めて花束をプレゼントできる事実が、この上なく嬉しかった。

このとき、店主が結愛の誕生日が近いことを教えてくれた。

誕生日と日頃のお礼を込めた花束をと、彼女の好きな花をふんだんに使った豪華な品を模索したが、どれもしっくりこなかった。

結愛を想ってあげたい花が、ひとつしか思いつかないのだ。

そして渡すかどうか悩みに悩んで、最終的に俺は贈ることに決めた。

『綺麗……。どうしてあえて薔薇を選んでくれたんですか?』
< 30 / 176 >

この作品をシェア

pagetop