秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
思っても見ない事実に、俺は驚きを隠せなかった。
いつも花で人を幸せにしている彼女自身が、受け取ったことがないとは。
『分かった。結愛のことを想ってプレゼントする。楽しみにしていて』
彼女が贈る相手に、いつもそうであるように。
結愛は意味が分かったのか、照れたようにはにかんでいた。
俺は彼女にとって初めて花束をプレゼントできる事実が、この上なく嬉しかった。
このとき、店主が結愛の誕生日が近いことを教えてくれた。
誕生日と日頃のお礼を込めた花束をと、彼女の好きな花をふんだんに使った豪華な品を模索したが、どれもしっくりこなかった。
結愛を想ってあげたい花が、ひとつしか思いつかないのだ。
そして渡すかどうか悩みに悩んで、最終的に俺は贈ることに決めた。
『綺麗……。どうしてあえて薔薇を選んでくれたんですか?』