秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
御曹司の猛攻
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「卵焼きさんとたこさんウィンナーは、無事にうさぎりんごさんを見つけて、お弁当箱に帰っていきました」
ぱたん、と絵本を閉じあやめの方を向くと、微睡んだ表情でふにゃりと口元を緩めた。
「みんないっしょ、よかったぁ」
「よかったね、あやめ。安心してねんねしてね」
「んっ……まま、おやしゅみ……」
あやめはもぞもぞと体を揺らし私に背を向けると、お気に入りの兎のぬいぐるみを抱きしめて寝息を立て始めた。
さらさらの黒髪を指ですくと、ふんわりとローズのシャンプーの香りが鼻をかすめた。
「いいこいいこ。ゆっくりお休み」
二十時前――いつもの時間に、あやめを寝かしつける。
寝室の電気をリモコンで消し、ようやく肩の力が抜けた私は思わず瞼を閉じた。
今日は秋人と再会し、まっすぐな気持ちを告げられてとても驚いた。
絶対に怒っていると思ったのに、違った。
彼はそれどころか、私に頭を下げて謝った――……。
私が一方的に身勝手に別れたというのに。
あの日のことを思い出すと、今でも胸の奥が苦しくなる。
『私も……秋人を誰よりも愛してる』