秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
三年前。
私は嗚咽が漏れてしまうのを必死に耐え、彼との最後の電話を終える。
まだぺたんこのお腹を撫でながら、涙が止まらなかった。
『秋人、この子は私が幸せにするから。ばいばい』
私の形跡がまったくなくなかったふたりの部屋で思う存分泣いた後、部屋に届いた薔薇の花束から一本抜き取り、その場をあとにした。
秋人と別れることは、少し前に心に決めていたのだ。
『ここの矢印で囲んでいる部分が心臓ですね。元気に動いてますし、赤ちゃんの大きさも問題ありません。十週ですね』
秋人が海外に出発して三日ほど経ったころ。
体調を崩していた私は季節の流行り病にかかっていると信じて疑わなかった。
けれど……内科に処方してもらった薬がまったく効かず、吐き気が激しさを増したため、医師の勧めで念のために産婦人科の受診を勧められたのだ。
すぐに自分で妊娠検査薬を使用し、はっきりと陽性反応が出た。
秋人とは避妊を欠かさずしていたため信じられないという気持ちとともに、愛する人の子を妊娠したかもしれない事実が心から嬉しかった。
まだ確実ではないため、病院で診てもらってから秋人に伝えようと心に決め、私は大学の帰りに、ひとりで産婦人科にやってきていた。
診察台の上に寝転びながら我が子をモニター越しで見て、喜びが溢れて止まらない。
――嬉しい。やっぱり赤ちゃんがきてくれていたんだ!
『出産の意思はありますか?』
『はい! もちろん』
『では、心拍も無事に確認出来ていますし、早めに区役所に行って母子手帳を受け取ってきてください』