秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
恐怖で怯える気持ちを抑えながら、宮森さんに勧められるままにソファに着席する。
すでに座っていた男性たちは皆、上質そうなスーツを着て、洗礼された雰囲気をまとっていた。
すると大きな咳払いが、張り詰めた空気を切り裂く。
『突然申し訳ありません。私、百貨店の葛城堂の名誉会長で、秋人の父です』
『えっ……と』
『ご存じありませんか? 全国で系列店を含めると二百店舗ほど運営している葛城堂という会社です』
もちろんこんな私でも知っている。
都内では超一等地にしか店舗を構えていない、老舗の大手百貨店というのは。
ただ、秋人がその葛城堂の会長の息子だという話は一度も聞いたことがない。
向かい側に座ってそう言い放った男性は、眉ひとつ動かさず私をまっすぐ捉えている。
本当に秋人の、お父さんだ。
恰幅の良い髭を生やした男性は、彫りが深く外国人のような顔立ち。
体系こそは違うものの、彼とそっくりだった。
『単刀直入に言います。秋人と別れて頂くべく、あなたに会いに来ました』
心臓がどくっと大きな音を立てた後に、激しく動き始める。
すると動揺する私に、宮森さんが淡々と説明を始めた。
秋人の実の兄が先日亡くなり、彼が葛城堂を継ぐことになったと……。