秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

突然部屋に入って来た店長は、一旦私たちに作業を止めるよう告げると、手に持っていた資料をひとりひとりに配っていった。

目に飛び込んできた見出しに、言葉を失う。

【一月中旬~二月十五日開催、銀座葛城堂バレンタインフェア、フォトスポットの制作】

銀座葛城堂……? これは、偶然?

真っ先に秋人の顔が浮かび、鼓動が高速で打ち始める。

資料が全員の手に渡ったのを確認すると、店長はそこに書かれた内容を淡々と話し始めた。

「急なんだが、葛城堂のイベント企画部直々に依頼が来た。バレンタインのフォトスポットの制作だそうだ。時間も迫っているし、来週から打ち合わせ、再来週にはデザインを決定して、発注までかけたい。ここにいる新人からも、今回から参加してもらいたいと思っている」

ざわつく作業部屋に、すでに以前から空間デザインを担当している先輩が驚嘆した。

「すごーい! 葛城堂といったら今までこういったイベントの依頼は長年決まった会社に発注していたのに! どんな風の吹き回しでしょうか」

「もしかしたら、先日のHappit生命のイベントで目をかけてくれたのかもしれないな」

盛り上がる仲間たちを横目に、浅くなった呼吸をこっそりと整える。

これはただの偶然だよね? 秋人が関わっているなんてことは……ないよね?

すると店長はふいに私に笑顔を向けてきた。

「瀬名! 君にも今回のイベントに参加してほしいんだが、やってくれるな?」
< 46 / 176 >

この作品をシェア

pagetop