秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
久し振りに店頭に立ってすぐ、歳を召したご婦人が来店する。
平日のお昼すぎということもあり、一番来店が少ない時間帯だ。
「今日はお花じゃなくて、もうすぐクリスマスが近いから玄関周りを可愛くしたくてねぇ。飾りなんかを探しに来たのよ」
「そうだったんですね。……ではクリスマスコーナーへご案内しますね。リースや造花で作ったオーナメント、プレゼント用のカードも少し取り扱いがありますので」
「まぁ、ありがとう! どれも素敵じゃない……」
ご婦人はしばらく悩み、店頭に飾ってあった私が制作したリースを選んで購入してくれた。
帰りしなにそれを伝えると、ご婦人は驚いた様子で「抜群のセンスね」と褒めてくれる。
「ありがとうございます。素敵なクリスマスになりますように」
扉の近くでそう感謝を伝えご婦人の後ろ姿を見送っていると、カツッと革靴の底が床に触れる音が響いた。
「結愛が作った商品は、他にはどれがある?」