秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
艶がかった低音にはっとし、反射的に後ろを振り返る。
「あ、きと」
今後顔を合わせることはきっとないだろうと思っていた、彼だ。
体温が上がっていくのを感じながら、数十センチ上にある端正な顔を見つめる。
ダークネイビーのビジネススーツを着た彼は、以前会ったときの張り詰めた表情とは打って変わり、リラックスしているような穏やかな表情だった。
胸がきゅうっと甘く痺れていく。
秋人の笑顔に体がまだこんなに歓喜するなんて、さすがに想像していなかった。
「久しぶりだな、結愛。元気そうで何よりだ」
「いつから……」
乾いた声が頼りなく喉奥から吐き出る。
ここにいたの? と尋ねたかったのだが結局緊張で声が出ず、秋人が先に隣の観葉植物のコーナーにある扉から入ったと伝えてきた。
互いの視線が固く結ばれ、沈黙の時間が流れた。
彼はしばらく見ない間に痩せたのか、以前よりも輪郭がシャープに、かつ少し長くなった前髪を流れるようにかき上げており、さらに色気が増して見えた。
秋人が私を見て優しく微笑む。
このときをどれだけ待ちわびたのだろう。そして、絶対に手に入らないと思っただろう。
いくら駄目だともがいたところで、やっぱり私は三年ぶりに秋人に再会して嬉しくて仕方なかったのだ。
決して伝えることは、ないけれど。
「どうしてまた、ここに来たの? だってこの前、あんな話をしたのに」
確実に冷静ではない私を見て、彼はふっと目元を細める。
「もちろん君に会いに。もう少し早く来たかったんだが長期出張で止む終えず……ね。それはそうと、君が作った商品はどれなんだ?」
「……っ」
秋人は私の問いには答えず、先ほどご婦人を案内したクリスマスコーナーに歩いて行く。
聞かれたからには、応えないのも失礼だろう。
緊張と戸惑い、そして歓喜。
それらがごちゃ混ぜになって、彼を追う足取りが重たくなる。
「この赤い松ぼっくりのリースと、ここにある白いリース、あとあの上からぶら下がっている小さいものも」
私が示した商品を彼はじっと見つめ、笑顔でこちらを振り返った。
「……どれもいいな。すべて買い取らせてくれ」
「えっ」