秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
「一石二鳥って。仕事の話をくれたのは本当にありがたいけど、こんなことお店の皆や貴船店長に知られたら……」
不安な気持ちで本音を呟くと、秋人はくすりと楽し気に笑う。
「バレたっていい。俺は別に既婚者でもないんだからな。才能を認めていて恋愛感情を持っている女性と仕事がしたいというだけだよ」
「秋人……」
秋人は昔からこうだ。
普段は人の気持ちに寄り添い、耳を傾けてくれるのだが、自分が通したい意見は絶対に曲げない。
時に強引だと感じるほどに。
今は私との時間を作ることなら、どんなことでもやってのけそうだと思った。
どうしよう。やっぱり子供がいることを伝えるべきではなかったんだ。
こんなことになっても、あのときは秋人のことを嫌いだとは到底言えそうにないが、別の言い訳をいくつか用意しておくべきだと後悔した。
「もうすぐだな。あと五分ぐらいで着くぞ」
秋人の一言に、弾かれたように窓の外を見る。
既に見慣れた景色が広がり、意識が徐々に切り替わっていく。
秋人とのことはあとでゆっくり考えよう。
今は高熱を出しているあやめを一刻も早く病院につれて行かないといけない。
とそのとき、ポケットに入れていたスマホが激しく震える。
画面を確認すると、母から着信がきていた。
「……お母さん? どうしたんだろう」