秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
秋人は車を、自宅の前に横付けする。
恐る恐る助手席の横窓を見ると、案の定母は驚いた顔で固まっていた。
無理もない。自分の子がこんな超高車に乗って帰って来るなんて夢にも思っていなかったはずだ。
しかも圧倒的に美形の秋人が、ハンドルを握っている。
大変なことになってしまった。こんなはずじゃなかったのに……。
母に秋人の姿を見られたのもそうだけれど、なにより秋人に母とあやめの姿を見られてしまった。
これ以上接触を増やすわけにはいかない。
「とっ、遠いところまでありがとう、秋人。本当に助かったわ……じゃあ、私はこれで」
背筋を伸ばしあやめと母の姿を見えないよう工夫するけれど、秋人はカチッとサイドボタンを押し、助手席と運転席の鍵を解除してしまう。
「秋人!?」
「結愛のお母様だろ? ここまで来て挨拶しないわけにはいかない。いっしょに降りるよ」
「そんなっ……!」
秋人の動きを止めようと、身を乗り出して手を伸ばすけれど、既に彼は私を見ておらず運転席から抜け出てしまう。
肝が冷えていくのを感じていると、助手席側に回った彼が、普段通り恭しく外からドアを開けてくれた。
気まずい気持ちで車から降りる私に対し、秋人はすでによそゆきの笑みを浮かべている。
「――初めまして。結愛さんの古くからの知り合いで、葛城と申します。いつもお世話になっております」