秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

彼女はHappit生命のパーティ会場で、私がひいていた台車にぶつかりそうになったと、騒ぎ立てた。

私はこのとき秋人に再会してしまい、逃げるようにして立ち去ってしまった。

だから、彼女が未解決のままですっきりしない気持ちになっていてもおかしくはない。

謝ろうかどうか悩んでいると、突然貴船店長が驚いた顔でこちらを振り返った。

「えっ、葛城社長は瀬名と知り合いだったのですか?」

いつの間にか、ふたりの話題は私に移っていた。

しかも、あろうことか、秋人は私と知り合いだということもばらしてしまっている。

焦っている私とは違い、秋人は落ち着き払った様子で、店長をも完璧な笑顔で魅了している。

「ええ、瀬名さんが美大に通っているときに仲良くしていまして……。彼女のセンスは当時から光っていましたので、ここで空間プロデュースに携わっていると聞いて妙に納得したんですよ」

「そうなんです。この子は本当にセンスが良くてですね。お客様の評判もダントツでいいんです」

ふたりがやりすぎなくらい褒め讃えてくれるので、嬉しいけれど居心地が悪い。

すると話し終えた秋人は、ふいに吉田さんのほうへ笑顔を向けた。

「吉田、本社の件はもう貴船店長には伝わっているのか?」

「いえ、まだです」

「じゃあ今、せっかくこうして会えたんだし、私から直接お願いしよう」
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