秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
秋人はそう前置きすると、再び店長と私に向き直った。
「貴船フラワーの実績をHPで拝見しまして、是非、本社の定期生け込みをお願いできればと思っております。一階のエントランス部分と、社長室になります」
「それは、とても光栄です。ありがとうございます」
店長が笑顔で秋人に応えると、彼はなぜか私に目線を動かす。
「では私から、彼女を定期担当に指名することは可能ですか?」
「えっ!?」
店長と同時に目を丸くしてしまった。
彼はそんな私たちに動じる様子もなく、ただただ穏やかに微笑んでいるだけだ。
「彼女の実力は熟知しております。瀬名さん、やってくれますか?」
すでに秋人は、店長の答えなどは待っていないようだった。
私をまっすぐ見て答えを促し、強い圧をかけてくる。
とても光栄な仕事だけれど、このままではさらに秋人の存在が近くになってしまう。
「瀬名は子供がいるので、シフトの範囲内でできるのなら是非。僕からは何も言わないですよ」
こたえあぐねていると、店長は私が自分の立場を考えて顔色を窺っていると受け取ったらしい。
優しくアシストしてくれた……のだが、なんとも複雑な心境だ。
どうやって秋人から逃れたらいいのか、もはや分からない。
彼と再会した時点で、完全に縁をたち切るというのはもう難しかったのだろう。
その場が静まり返り、視線が一斉に私に集中する。
「……は、い。やらせて頂きます……」