秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

急いで部屋の角に隠れたけれど、あやめはすぐに私をみつけ、背中に体当たりしてくる。

「おんぶちてっ、おんぶ!」

甘えてくるあやめに口の前で「しっ」とジェスチャーするけれど、引き下がる様子はない。

すると電話の向こうで、喉の奥で笑うかすかな声が聞こえてきた。

『あやめちゃん、近くにいるのか? 少し替わることはできるか?』

「えっ、あやめと……?」

『あぁ、あんな可愛い写真を見たら、直接話したくなる』

思ってもみない申し出に驚きつつ、秋人との通話を辞める。

スピーカーにしたいところだけれど、近くに父も母もいるので、しゃがんであやめの小さな耳にスマホを当てた。

「あやめ、お兄さん。ラビィの彼氏」

私が補足すると、あやめはぱぁと笑顔を咲かせ、小さな手でぎゅっとスマホを掴む。

「もちもーち?」

『あやめちゃん。お洋服着てくれてありがとう。うさたんとりすたんが好きだと、ママに聞いたよ』

「うん!  だいしゅき!  あらいぐまのるるくんもすき」

『るるくん?』
< 85 / 176 >

この作品をシェア

pagetop