秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには先日秋人の隣に立っていた女性が私を見下ろしていた。
顔は笑っているけれど私に向ける眼差しは冷ややかだ。
張り詰めた空気を感じながら、急いで立ち上がる。
「いらっしゃいませ。失礼しました、気づかずに」
「いえ、とんでもない。先日はちゃんと挨拶ができずに申し訳ありませんでした。私、こういうものです」
女性は早々にバックから名刺入れを取り出して、一枚を私に差し出した。
「Happit生命の……秘書さん……」
「ええ。祖父が社長をしていまして。副社長の父の秘書室にいます。秋人さんとは取引先として、古くからの仲なの」
彼女の名前は【雪平梢】さんで、やはりあの生命会社のご令嬢のようだ。
突然秋人の名前が出てきて、緊張が走る。
梢さんに視線を送ると、怒りがこもった目でしっかりと見つめ返された。
「あなた、秋人さんとどういったご関係? もしかして“三年前の恋人”……じゃないでしょうね?」