秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
思わず声を漏らす。
さっきよりもずっとずっと、心臓が嫌な音を立てている。
彼女が、私たちの思い出に踏み込んできているような気がしてしまうのだ。
しかしそれはただの気のせいだと言い聞かせ、雪平さんといっしょに、赤い薔薇の場所へと移動する。
「何本にしましょうか? 花束だと、他の種類のお花も入れてもいいかと」
「いいえ、真っ赤な薔薇がいいのよ。数は、ニ十本くらいかしら……」
雪平さんは私の提案をやんわりと笑顔で拒否する。
先程とは打って変わり、彼女がとても楽し気なのが怖い。
「こちらは贈り物ですか?」
私が尋ねると、彼女はふるふると首を振った。
「いいえ、自分に。私、秋人さんに薔薇の花束をプレゼントされてから、家でもよく飾るようになったんですよ」
彼女の言葉に、薔薇を掴みかけていた手が止まる。
今、なんて……。
「秋人さんから二十歳の誕生日に頂いたの。彼、ロマンチストでしょう?」