秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
翌日――。
早朝に店舗で軽作業を行った後、私はスケジュール通り、朝十時には葛城堂の本社へと到着した。
今日は初めての生け込みを行う。
雪平さんから聞いた話が頭にこびりつき、昨晩はなかなか寝付けなかった。
秋人からはいつも通り他愛のないメッセージが届いていたけれど、私は体調が悪いと告げてろくに返事をしなかった。
秋人は私に気を遣ってくれた。
そんな彼を疑いたくない。
けれど、雪平さんの言っていることに真実味があり、どうしても信じ切れないのだ。
秋人に事実を確認したいけれど、そうなると自分から彼に告白をするようなもの。
――例え、彼が雪平さんと何かあったところで、私がとやかくいう立場じゃない。
――自分から恋愛関係を進みたくないと伝えているのに、嫉妬して責めるのもおかしい。
頭では分かっているのに、どうしても心が秋人を求めてしまう。
秋人は魅力的な人であり、私と離れている間に他の女性と何かあることは、ごく自然のことだと思う。
でも、自分勝手だけれど……薔薇の花束だけは、私だけに贈ってほしかった。
ふたりだけのものであってほしかった。
「こちらが社長が用意した花瓶になります。他に必要なものはありますか?」