秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています

翌日――。

早朝に店舗で軽作業を行った後、私はスケジュール通り、朝十時には葛城堂の本社へと到着した。

今日は初めての生け込みを行う。

雪平さんから聞いた話が頭にこびりつき、昨晩はなかなか寝付けなかった。

秋人からはいつも通り他愛のないメッセージが届いていたけれど、私は体調が悪いと告げてろくに返事をしなかった。

秋人は私に気を遣ってくれた。

そんな彼を疑いたくない。

けれど、雪平さんの言っていることに真実味があり、どうしても信じ切れないのだ。

秋人に事実を確認したいけれど、そうなると自分から彼に告白をするようなもの。

――例え、彼が雪平さんと何かあったところで、私がとやかくいう立場じゃない。

――自分から恋愛関係を進みたくないと伝えているのに、嫉妬して責めるのもおかしい。

頭では分かっているのに、どうしても心が秋人を求めてしまう。

秋人は魅力的な人であり、私と離れている間に他の女性と何かあることは、ごく自然のことだと思う。

でも、自分勝手だけれど……薔薇の花束だけは、私だけに贈ってほしかった。

ふたりだけのものであってほしかった。

「こちらが社長が用意した花瓶になります。他に必要なものはありますか?」
< 95 / 176 >

この作品をシェア

pagetop