元傾国の悪女は、平凡な今世を熱望する

4.危うきに近寄るべからず

 殿下とわたしの関係は大きく変わることなく、数週間が経過した。

 相変わらずちょっかい掛けられたり、時に熱い眼差しを向けられたりするけど、生徒会の仕事が本格的に忙しくなって、そもそも二人きりになる機会が激減したっていうのが大きな要因だったりする。


(まぁ、殿下が忙しい理由はそれだけじゃないけど)


 学園祭の最終日にある後夜祭。彼のパートナーに選ばれたい令嬢方が引っ切り無しに声をかけてくるため、殿下は学園内を逃げ回っていた。

 生徒会室なんて場所に留まっていたら、あっという間に呼び出されてしまい、わたしたちまで仕事にならない。
 だから殿下は、日毎に教室を変えて、そこから指令を飛ばしていた。

 そんなまどろっこしいことをしているため、どうやったって仕事は遅れる。ダンスの相手を務めたぐらいで将来が決まる訳じゃないんだし、殿下には早くパートナーを決めてほしいと思っていた。


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