【コミカライズ決定】本日をもって守護騎士を解任します。悪役令嬢の運命に巻き込みたくないので。

 それなのに、私はその場に縫い留められてしまったみたいに、身動きが取れずにただ、エディルが近づいてくるのを見つめていた。

「――――シル」
「エディル……」

 騒めきすら遠くで聞こえる波音のように、その存在感を朧げにしていく。

 いろいろなことを考えていたのに、今私の心の大部分を占めてしまっているのは「会いたかった」の一言だけ。だって、幼い日から、こんなに長い間、会えないことなんてなかった。

 その言葉を口にすることは叶わない。
 私がこの後どうなっても、絶対に巻き込まれたりしないでほしいと、ちゃんと言わないと。

「神聖なる大会の優勝者として、ここに宣言する」

 低く艶やかなのに、会場中の注目を集めてしまうように響き渡るその声。
 その声は、いつもの声なのに、おかしなことに耳の奥が甘くしびれるみたいだった。

「優勝者、エディル・フィルディルトは、神と王家の御前に我が望みを告げる」

 会場のざわめきは、急速に消えて、代わりに真夜中の砂漠の中央に立ってしまったかのような静寂が訪れる。
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