【コミカライズ決定】本日をもって守護騎士を解任します。悪役令嬢の運命に巻き込みたくないので。
ここは、もう泣くのを我慢する場所じゃないから。
英雄の帰還をけなげに待ち続けたお姫様。たぶんそれは、勝利に浮かれる民衆にとっては、そしてまだ戦いの傷が癒えないこの王国では、格好の話題になったのだろう。
瞬く間に、噂には尾ひれがついて、私は勝利を導いた乙女ということになってしまった。
「やっぱり、ここにいた」
特に悲しかったわけではない。
わけではないけれど、一人になりたい時に、庭の植木の間に設けられた、この隙間はとてもありがたい。
「エディル……」
「ふふ。困ってしまった時に、一人で考えて行動できるのは美徳だけれど、今は俺がいるんだから、頼ってくれると嬉しいな」
エディルには、お見通しみたいだ。
今、フィルディルト伯爵令息の屋敷には、ひっきりなしに人が訪れている。
それはもちろん、エディルと会うためでもあるけれど、今や王国中の注目を浴びてしまった、私とエディルの結婚式の準備のためでもある。
ゲーム内の知識と、公爵家令嬢として育った私は、国内の貴族全員の顔と名前を知っている。むしろ、一人一人について三十分以上語れる自信がある。
でも、ここまで大々的な結婚式になるなんて誰が予想しただろうか。