【コミカライズ決定】本日をもって守護騎士を解任します。悪役令嬢の運命に巻き込みたくないので。

「……シル。やっぱりここにいた」
「エディル……? どうしてここに」

 エディルは、私のことをシルフィーナ様ではなく、幼い頃に一緒に遊んだ時のようにシルと呼んだ。
 信じられない思いで、私はエディルの月に輝く銀白色の髪と藍色の瞳を呆然と見つめていた。

「シルは悲しい時は、いつもここに籠っていたからね」
「え……」

 なぜか、エディルが私の方を見つめて満面の笑みを浮かべる。
 どうして、怒って私のことを責めてもいいはずなのに、そんな笑顔で見つめているの。

「どうして……。怒っていいのに、もう二度と会わないつもりだったのに」
「ああ、怒っているよ。何も相談してくれなかったシルに。……でも、俺としては好都合だったかもしれない。シルの守護騎士を本当は辞めてしまいたかったから」
「え? そうだったの?」
「……でも、良かったの? 今回のことでシルの評判は地に落ちてしまった。シルは知らないかもしれないけど、せっかく、王太子殿下と婚約する話が内定するところだったのに」

 ああ、乙女ゲームでも、シルフィーナは十五歳の誕生日の直後に王太子殿下との婚約が発表されたという設定だった。
 やっぱり、ここは現実のようで乙女ゲームの物語の通りに進んでいくのね。

 でも、少なくとも守護騎士として悪役令嬢と運命を共にするエディルは、守護騎士の資格を失った。
 シナリオはすでに、大きくずれたはず。
< 6 / 29 >

この作品をシェア

pagetop