悪役令嬢リセルの恋
「シンデレラ、なにやってんだい! さっさと片づけをし! また鞭で叩かれたいのかい!」
「すぐにしますから、鞭は勘弁してください」
泣きそうな声で訴え、懸命に使用人の仕事をするブロンドの乙女シンデレラ。みずぼらしい灰色の服を着て、伯爵夫人が花瓶を割って散らかした部屋を片付け始めた。
自身は美しい色のドレスに高価なアクセサリーをつけ、シンデレラが片付ける様子を苛立った表情で眺めている。
「こんなこともさっさとできないのかい。まったくのろまで役立たずな娘だよ。伯爵の遺言さえなければ、追い出しちまうのに」
「お母さま、仕方ないですわ。私たちと違って、シンデレラにはなんの才もないんですもの」
嫌味な笑みを浮かべるのはリセルの姉である。
その様子を結衣はなにも言うことができず、呆然と眺めていた。それが数か月前のことである。
そう、結衣はシンデレラの世界に迷い込んでいたのだった。しかも、ヒロインではない。世界で最も有名な悪役令嬢ともいえる、イジワルな姉妹の妹として生きることになっていたのだ。
ただひとつ本と違う点は、ここが帝国であり、ヒーローは王子ではなく皇太子であるということ。
なぜこの世界に来たのか。どうして悪役になったのか。寝込むほどの衝撃を受けたのはいうまでもなく、しばらくは部屋に閉じこもっていたのだった。
「すぐにしますから、鞭は勘弁してください」
泣きそうな声で訴え、懸命に使用人の仕事をするブロンドの乙女シンデレラ。みずぼらしい灰色の服を着て、伯爵夫人が花瓶を割って散らかした部屋を片付け始めた。
自身は美しい色のドレスに高価なアクセサリーをつけ、シンデレラが片付ける様子を苛立った表情で眺めている。
「こんなこともさっさとできないのかい。まったくのろまで役立たずな娘だよ。伯爵の遺言さえなければ、追い出しちまうのに」
「お母さま、仕方ないですわ。私たちと違って、シンデレラにはなんの才もないんですもの」
嫌味な笑みを浮かべるのはリセルの姉である。
その様子を結衣はなにも言うことができず、呆然と眺めていた。それが数か月前のことである。
そう、結衣はシンデレラの世界に迷い込んでいたのだった。しかも、ヒロインではない。世界で最も有名な悪役令嬢ともいえる、イジワルな姉妹の妹として生きることになっていたのだ。
ただひとつ本と違う点は、ここが帝国であり、ヒーローは王子ではなく皇太子であるということ。
なぜこの世界に来たのか。どうして悪役になったのか。寝込むほどの衝撃を受けたのはいうまでもなく、しばらくは部屋に閉じこもっていたのだった。