悪役令嬢リセルの恋
ガラスっぽいそれは現代でいうビー玉のようで、何個も転がっている。逃走男がやみくもに店のものを投げた際、何らかの理由で落ちたものに違いない。
学生時代の部活はソフトボール部。しかもピッチャーである。コントロールには自信があった。
リセルは玉をいくつか拾い、走ってくる男の足元に転がるよう狙いを定め、ぽいっと投げた。うまくいけば玉に足を掬われて転ぶはずだ。
逃走男は目論見通りに地面に転がった玉で足を滑らせ、「うわあっ」と声を上げ前のめりになり、地面に顔を強打してのびている。
そこに追いついた大柄の騎士がどしんと馬乗りになった。
「ぐええぇぇぇ」
逃走男はカエルがつぶれたような声を出し、大柄の騎士は嬉々とした表情で「観念しろ!」とのたまった。一件落着である。
「ふぅ、うまくいったわね」
と、ほっとしたのはつかの間だった。
「あいたたたた……」
通りでうめき声をあげて倒れている老婆が目に入り、リセルは急いで駆け寄って支え起こした。
「おばあちゃんどこが痛いの?」
「足も腰も……それに買い物した荷物も吹っ飛ばされてバラバラだよ。まったく、ひどいもんだねぇ……」
ほかにも転んだ人が何人もいるし、物が散乱した通りは嵐が去った後のようだ。
騎士たちは通りの真ん中に集まっているだけで、指揮をとって事態を収拾する様子は見えない。
学生時代の部活はソフトボール部。しかもピッチャーである。コントロールには自信があった。
リセルは玉をいくつか拾い、走ってくる男の足元に転がるよう狙いを定め、ぽいっと投げた。うまくいけば玉に足を掬われて転ぶはずだ。
逃走男は目論見通りに地面に転がった玉で足を滑らせ、「うわあっ」と声を上げ前のめりになり、地面に顔を強打してのびている。
そこに追いついた大柄の騎士がどしんと馬乗りになった。
「ぐええぇぇぇ」
逃走男はカエルがつぶれたような声を出し、大柄の騎士は嬉々とした表情で「観念しろ!」とのたまった。一件落着である。
「ふぅ、うまくいったわね」
と、ほっとしたのはつかの間だった。
「あいたたたた……」
通りでうめき声をあげて倒れている老婆が目に入り、リセルは急いで駆け寄って支え起こした。
「おばあちゃんどこが痛いの?」
「足も腰も……それに買い物した荷物も吹っ飛ばされてバラバラだよ。まったく、ひどいもんだねぇ……」
ほかにも転んだ人が何人もいるし、物が散乱した通りは嵐が去った後のようだ。
騎士たちは通りの真ん中に集まっているだけで、指揮をとって事態を収拾する様子は見えない。