悪役令嬢にならないか?
悪役令嬢への誘い
「悪役令嬢にならないか?」
リスティアは、動いている心臓を握りしめるかのように右手を胸元に当てた。震える心を落ち着かせたいからだ。
「今、なんておっしゃったのでしょうか?」
彼女は今、一人の男と向かい合って立っている。
ここは王立学園付属図書館の地下書庫。
このような場所を定期的に訪れるのは、一部から『変な女』と言われているリスティアくらいだと思っていた。だが、今日は先客がいた。
その先客は目の前に立っている男――ウォルグ・シュノールである。
艶のある黒髪は短く切り揃えられ、光の加減によっては金色にも見えるような薄茶の瞳が、楽しそうに揺らめいている。
「『悪役令嬢』にならないか、と。リスティア嬢を誘ったつもりなんだけど」
彼の色めいている唇が紡いだ言葉は、リスティアでさえも首を傾げたくなるような内容だった。
「悪役令嬢、ですか?」
彼を見上げるようにして尋ねると、一つに結わえていた象牙色の髪が肩からハラリと落ちる。
「そう、悪役令嬢」
確かめるかのように、彼はまたその言葉を口にする。
リスティアは、動いている心臓を握りしめるかのように右手を胸元に当てた。震える心を落ち着かせたいからだ。
「今、なんておっしゃったのでしょうか?」
彼女は今、一人の男と向かい合って立っている。
ここは王立学園付属図書館の地下書庫。
このような場所を定期的に訪れるのは、一部から『変な女』と言われているリスティアくらいだと思っていた。だが、今日は先客がいた。
その先客は目の前に立っている男――ウォルグ・シュノールである。
艶のある黒髪は短く切り揃えられ、光の加減によっては金色にも見えるような薄茶の瞳が、楽しそうに揺らめいている。
「『悪役令嬢』にならないか、と。リスティア嬢を誘ったつもりなんだけど」
彼の色めいている唇が紡いだ言葉は、リスティアでさえも首を傾げたくなるような内容だった。
「悪役令嬢、ですか?」
彼を見上げるようにして尋ねると、一つに結わえていた象牙色の髪が肩からハラリと落ちる。
「そう、悪役令嬢」
確かめるかのように、彼はまたその言葉を口にする。
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