悪役令嬢にならないか?
 今までもウォルグが悪役令嬢への道を導いてくれたが、それにもかかわらずまだ足りないものがあるらしい。
「おや、気づかないのか? 今まで僕から悪役令嬢になるためのレッスンを受けたというのに」
 だからこそ、完璧な『悪役令嬢』に近づけたと思っている。まだ足りないものがあるとは思ってもいなかった。
 小首を傾げるようにしてウォルグを見つめる。
「えぇ……。わかりません」
 くつくつと、ウォルグは喉の奥で笑った。
「君は、それはわざとなのか……? だが、まぁいい。卒業パーティーまでには準備しておくよ」
「ありがとうございます」
 リスティアは深々と頭を下げた。
 その後もウォルグとは指導という名目において地下書庫で会っていたし、それは卒業パーティーの前日まで続いていた。リスティアはその時間を心のどこかでは楽しみにしていた。


< 28 / 56 >

この作品をシェア

pagetop