悪役令嬢にならないか?
「エリーサ。君は、権力を振りかざして、学園に通う令嬢たちと定期的に茶会を開いていただろう。だが、ここにいるミエルはそれに招待されていない。同じ学園に通いながらも、ミエルだけ仲間外れにする理由はなんだ」
「それは……」
 言いかけたエリーサであるが、その続きの言葉は出てこなかった。口を開いては閉じ、何か言葉を選んでいるようにも見える。
 だが、アルヴィンはエリーサの言葉を待たずに、畳みかける。
「それに。君が今腕につけている腕輪もミエルのものではないのか? 彼女はお気に入りの腕輪を無理矢理エリーサに奪われたと、私に泣きながら訴えてきた」
 エリーサは小刻みに震えていた。
「それから、まだある。学園の階段で擦れ違いざまにミエルの身体を押しただろう。危うく彼女はバランスを崩して、階段下まで転げ落ちるところだった。まぁ、近くにロバートがいたから、助かったのだが」
 リスティアはじっとエリーサを見つめていた。隣の兄も同じである。
 エリーサがそのようなことをしていないのを、リスティアも彼女の兄も知っている。だが、アルヴィンは婚約者であるエリーサが信じられないのだろうか。
「エリーサ。事実なだけに、何も言えないのか?」
 エリーサはじっと唇を引き締めていた。
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